FabCafe Nagoya レポート

「名古屋共創会議vol.5」の開催

2022年3月24日(木)FabCafe Nagoyaにて、名古屋におけるオープンコラボレーションの可能性を探求するシリーズイベント「名古屋共創会議vol.5」を開催しました。今回のテーマは、「変化に向けた外部とのコラボレーション」。

スピーカーには、岐阜県各務原市にある株式会社林本店の代表取締役社長の林里榮子さんをお招きしました。林本店では、コロナ禍で海外・国内で対面営業が制限されるなか「飲める会社案内(日本酒試飲キット)」を外部デザイナーとともに開発。会社案内と日本酒5種類(各30ミリリットル)を壜詰めではなく厚さ3センチのパッケージに収めた「飲める会社案内」により、輸送コスト・破損リスクを抑えながら、取引先や顧客との非対面コミュニケーションのアップデートに挑戦しています。
イベントでは、林さんから外部デザイナーとコラボレーションした経緯やプロセスをお聞きしながら、株式会社ロフトワーク(以下、ロフトワーク)のプロデューサーとともに「外部とのコラボレーション」で生まれる変化について議論しました。

林さんからプロジェクトの内容についてお話しいただいた後、本プロジェクトのプロデューサーを務めたロフトワークの井田さんとのトークセッションを行いました。
外部デザイナーとのコラボレーションを始めたきっかけについて、「経営上の(財務の)数字も重要である一方で、『未来』を考えたかった」と林さん。お酒が「美味しければ売れる」時代は終わり、自社はお酒をつくることのプロフェッショナルではあるが販売(営業)は不得意だと感じていました。そこで、どうすればお酒や会社の魅力が伝わるのかを学びたいと思い、「Dcraft デザイン経営リーダーズゼミ(以下、Dcraft)※」を受講したことがデザイナーとの取り組みのスタートでした。
※「Dcraft」は、ロフトワークが開催した30社の中小企業が次世代のビジネスを牽引するリーダーとなることを目指し、デザインを活用した経営手法=デザイン経営の実践を支援する7ヶ月間のプログラムです。詳しくはこちら(https://loftwork.com/jp/project/dcraft

林さんは、外部とコラボレーションで得たものについて、どうすれば自分たちの想いや商品がデザイナーに伝わるのかを考えることから始まり、ワークショップを通じて客観的に自社を見直せたことが大きな財産だったと話します。会社の強みをちゃんと伝わる文章として言語化でき、会社を語れるようになったことが他社との競合においても優位に働いているそうです。また、「地域から与えてもらっていること、与えていることを整理した時に圧倒的に与えてもらっていることが多いことに気づかされ、地域に対する意識が変わりました」と話し、今後は、地元の魅力を伝えるためのツアーの企画、老木化する地域の桜の保護を目的としたクラウドファンディングも準備中とのこと。
会場には、実際にプロジェクトに参加した林本店の蔵人である淺野さんも来場され、「ワークショップで絵本をつくったり、紙芝居をつくったり、最初は何をやっているんだろうと思っていました。プロジェクトを通じて、固定概念に囚われていることへの気づき、今まで関心のなかった取引先とのコミュニケーションやコストについて考えるようになり、思考の幅が広がりました」とプロジェクトを振り返りました。

プログラムはその後、ロフトワークの小島さんより、「サーキュラーエコノミー社会を見据えた新規事業開発プロジェクト」の事例を紹介。外部とコラボレーションすることで①異分野視点による「先入観の壁」の突破、②探求対象の「自分ごと化」、③思考スケール感の飛躍が期待できることが示されました。

そして、クロストークでは林さん、井田さん、小島さんの3名で「異なる視点がもたらす変化」についてパネルディスカッションを行いました。

数多くのプロジェクトをプロデュースしているロフトワークのお二人からは、新しいことをはじめようとしたときに、これまでの延長線上のコミュニケーションでは現状の発想からは抜け出せず、異なる視点を取り入れることが有効である。また、外部パートナーが入ることで環境が変わり、普段言いづらいことが言えたり、対話が成立しやすくなったり、参加するメンバーの心理的な壁を取り除くことにも繋がるとの話がありました。
一方で、外部とのコラボレーションする際の留意点として、「外部パートナーとのフラットな関係性」と「社員の巻き込み」が挙げられ、外部のパートナーは自身や自社の視野を広げ、高めてくれる存在であり、答えは自分の中にあるという認識のもと、メンバーの気づき・学びが大切である。また、その学びを然るべきタイミングで、他のメンバーにも共有し、発言してもらう機会を作っていくことで、コアメンバー以外の自主的なアクションを促し、継続的な取り組みにしていく必要があるとの意見が出ました。
実際に、林さんは「経営者一人でできることは限られるので社員を頼る」という姿勢で、ワークショップの成果物を積極的に社員に披露し、「自分には関係ない」と思われないように努めたとのこと。

最後に登壇者からは、取り組みやすい小さなコラボレーションとして、自社についてお取引先やお客様に直接聞いてみる、フレームワークを使って考えてみる、FabCafe NagoyaやOKB総研のメンバーとの「壁打ち」してみるなどの方法を挙げられました。

各分野のプロフェッショナルであればあるほど、固定概念が新たな発想を阻害する可能性があります。外部とのコラボレーションにより異なる視点を取り入れ、自社・自身の状況を客観的に見つめ直すことが、現状を打破するヒントになるのではないでしょうか。

FabCafe Nagoyaメンバーとざっくばらんに意見交換ができる「壁打ち」をご希望の方は、こちらからお申し込みいただけますので、お気軽にお問い合わせください。
https://fabcafe.com/jp/nagoya/business-service/

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